夏になると思い出すこと。

人より、少し「霊感」と言うか。

感じるものがある気がする。

 

もうずいぶん前に、車でも電車でも、半時間ほどのところに、

遊園地と動物園が一緒になったものがあった。

今は、商業施設やら、ジムやら、できている。

遊園地の乗り物は、大したもの、なくて。

小学生くらいまでの子供に、ちょうどいいようなものが多かった。

それでも、近かったし、しかも、夕方から入場すると、半額になったりで、

けっこう、よく行った。

特に夏は、9時までやっていたので、ちょっとでも涼しくなってから、

と、本当によく行った。

 

比較的空いてる駐車場があって、いつも、そこに車を停めていた。

その出入り口のそばにある乗り物。

ビニール製のプール状の船に乗り、滝すべりをする。

も、びしょぬれ。

びしょぬれになるから、いつも、その乗り物は、一番最後。

 親戚の子供たちが納得するまで、乗っては、降りを繰り返す。

それを見ながら、いつも待つベンチがあった。

ベンチの向かいには、トイレ。

子供たちが遊んでる間に、大人は、交代で、トイレに。

 

私が行くときに、すれ違った母子がいる。

30代くらいのお母さんと、小学校低学年くらいの女の子。

初めて、出会ったときは、特に気にもしていなかった。

いつごろから、気になったのかも、覚えていない。

数年、経った頃に、ふと、気が付いた。

あれ、この親子、去年も出会った気がするなぁ。

記憶に残ったのは、親子の服装。

暑い夏なのに、きちっとしたワンピースを着てる。

色も柄も、今でも覚えてる。

気になり始めたころ、思い切って、声かけてみようかと、

すれ違ってすぐに、振り向いた。

そこには、誰もいない。

でも、すれ違ったときの風を、私は、感じていた。

ふと、この親子って、この世の人じゃないのかもしれない。

そう、思った。

不思議と、ぜんぜん、怖くなかった。

また、会えるかな。

そんな風にさえ、思った。

そう、思い始めてからも、数回、すれ違った。

すると、すれ違ったときの風が、ひんやりしてることに気が付いた。

やっぱり、この世の人じゃない。

何か、ここに思い出がある人たちなんだ。

 

それから、ずいぶんして、遊園地が閉鎖されることになった。

最後の夏にも行った。

その親子に教えてあげたかった。

私がトイレに向かうと、トイレが出てくる親子。

「ここも、もう、閉鎖ですね。」

最初で、最後に声をかけた。

返事は、なかった。

ただ。

いつもは、すれ違うのに、この時は、親子が私の中をふわぁ~と通り抜けた気がした。

怖くも、なんともなかった。

 

それから、しばらくして、遊園地は、なくなり、壊され、新しい建物ができた。

それでも、夏になると、必ず、この親子のことを思い出す。